金属表面のわずかな変異を微小な電流で捉える。―― 割れ、硬さ、研削焼けを非接触で可視化。
渦流探傷(ET)は、金属などの導電体を対象とする非破壊検査です。非接触・高速な検査が可能でありデジタル化とも親和性が高いため、インラインでの全数検査や微細な欠陥検出を無人化・省人化するのに最適な手法です。本ページでは、基礎原理から材料ごとの特性、最適なプローブの選定まで、実務に役立つ情報を網羅的に解説します。
渦流探傷検査(ET)を採用するメリット
高速・全数検査
自動化ラインに組み込み、100%全数検査に対応。生産性を落とさず品質のリアルタイム監視が可能です。
微細な欠陥を検知
表面の微細な割れだけでなく、熱処理不良による材質変化(硬さ・研削焼け)も高感度に検知します。
非接触・クリーン
対象物に非接触のため傷がつかず、浸透探傷(PT)等で必要な洗浄・乾燥など前後処理の手間を削減できます。
- [1] 渦流探傷のメリット
- [2] 渦流探傷の概要(各種非破壊検査の特性比較)
- [3] 渦流探傷の応用分野
- [4] 渦流探傷の原理
- [5] インライン全数検査の計測頻度・処理要件(シミュレーション)
- [6] 渦電流の浸透深さ(材料ごとの違い)
- [7] 渦流探傷センサの種類(形状別)
- [8] 渦流探傷の信号表示
- [9] よくある質問(FAQ)と使い分け技術資料
渦流探傷の概要
渦流探傷(ET=Eddy current TestingまたはElectromagnetic Testing)とは、金属などの導電体表面付近に存在する割れや腐食などの欠陥を非破壊で検査する手法であり、高い安全性が求められる素材や部品、全数検査が求められる素材や部品の検査に適しています。検査対象の材料には磁性・非磁性を問いません。また、形状や材質によって混合物の異材選別に用いたり、熱処理状態の見極めにも用いることができます。
超音波(UT)・磁粉(MT)・浸透(PT)など、他手法との詳細な物理特性比較やインライン自動化への適合度一覧表はこちらからご覧いただけます。
渦流探傷の応用分野
ETは金属加工、航空宇宙、自動車、船舶、原子力、石油化学や燃焼・冷却といった幅広い産業で利用実績があります。一例として航空機整備においてはポータブル器が、また、鉄鋼や自動車においては自動検査装置が多く利用されています。他にも、鉄道のレール検査に用いられる特別なポータブル検査器や車載型の検査機といった応用事例がございます。原理を同じくするものの、応用分野ごとに全く異なった外観を有するのも渦流探傷の特徴のひとつです。
より具体的には「用途・事例」のページをご覧ください。
渦流探傷の原理
渦流探傷は、非破壊検査手法の一種です。交流電流を印加したコイルを検査体(金属)表面に近づけたときに、検査体表面に生じる渦電流の大きさが欠陥の有無や材質の不均一性といった要因によって変化することを利用し、対象にダメージを与えずに検査を行います。表面に開口した欠陥(亀裂、割れ、打痕、欠け)だけでなく、表面近傍の内部欠陥(腐食、鬆(巣・空孔)、溶接不良、熱処理不良)を検査することも可能です。
コイルに交流電流を流すと、周囲に磁場が発生します。
コイルを金属(検査体)に近づけると、表面に渦電流が生じます。
欠陥がない場合、渦電流は一定の磁場を発生させ、安定した状態で検出されます。
欠陥(割れなど)があると渦電流が乱れ、信号に変化が生じることで欠陥を検知します。
渦流探傷(ET)の原理や強みが分かると、現場では「じゃあ磁粉探傷(MT)や浸透探傷(PT)からどう切り替えればいいのか?」という具体的な実務判断が必要になります。現在、手法の選定基準を詳しくまとめた解説コラムを限定公開中です。
インラインでの全数検査を実現するために必要な計測頻度とデータ処理の要件
量産ラインのインライン全数検査において、見逃しのない確実な品質保証(ゼロディフェクト)を実現するには、搬送スピードに対する「計測頻度(サンプリングレート)」と、判定から仕分けまでを同期させる「データ処理のリアルタイム性(低レイテンシー)」の2つが絶対的な要件となります。
⚙️ 搬送速度とサンプリング周波数の技術シミュレーション
例として、鉄鋼の高速ラインや高精度シャフト製造現場を想定し、搬送速度 10 m/sec(分速 600 m) のインラインにおいて、製品寿命に致命的な影響を与える 幅 0.1 mm の微細クラック(または局所的な研削焼け) を検出する場合を計算します。
欠陥(0.1 mm = 0.0001 m)がプローブの直下を通過する時間 = 0.0001 m ÷ 10 m/sec = 0.00001 秒 = 10 マイクロ秒(µs)
信号の取りこぼしを防ぎ、欠陥の急峻な波形ピークを客観的かつ安定して捉えるには、この僅か 10 マイクロ秒(µs)の通過時間の間に最低でも 2回以上 のデジタルサンプリング(データ収集)を行う必要があります。つまり、1データあたり 5マイクロ秒以下 の極限まで引き下げられた超高頻度な計測タクトが絶対条件です。
ドイツ・ローマンのフラグシップ探傷器 ELOTEST PL650 は、250 kHz(1秒間に250,000回 = 4マイクロ秒おき) の驚異的な超高速デジタルサンプリングレートを誇り、他社システムではノイズに埋もれるか通過してしまうような、超高速ライン上のコンマ数ミリに満たない極微細な局所変質やクラックをも 100%全数漏れなく確実にキャッチします。
⚡ 高速タクトラインにおけるデータ処理・I/O制御要件
毎秒 10 個(1個あたりのサイクルタイム 100 ミリ秒)の超高速タクトで製品が流れる自動仕分けラインでは、探傷器本体の「データ処理遅延(内製演算レイテンシー)」がシステムの死活問題となります。
センサーが欠陥を検知してから、波形選別を行い、ハードウェア(PLC)を介して「OK/NG仕分けゲート」の物理ソレノイドへ駆動信号を出力するまでの時間は、コンマ数ミリ秒〜数ミリ秒以内の極限まで引き下げられたリアルタイム性が要求されます。処理遅延(レイテンシー)が大きな一般的な測定器やPCベースの処理システムでは、判定信号が仕分けゲートの物理的な動作タイミングに間に合わず、不良品流出のリスクを排除できません。
ELOTEST PL650は、データ処理専用に完全独立した高速FPGA・DSPプロセッサーを内蔵。マルチチャンネル(多点)の同時スキャン時であっても、バックグラウンド処理の負荷に影響されることなく、デジタル判定から高速I/O出力(バス制御、ダイレクトデジタル出力)までをミリ秒未満(マイクロ秒単位)の超低遅延でリアルタイム実行します。
インライン全数検査の現場では、搬送の「バタつき」「治具の振れ」によるリフトオフ変動ノイズが激しく発生するため、単純な計算値だけでなく、プローブの配置、エッジ効果の抑制、ELO/IMAGEを用いた穴部(オイルホール等)の除外処理などの総合的な最適化が不可欠です。
当社では、御社のライン搬送速度(m/sec)、ターゲットタクト(秒間個数)、および要求される検出欠陥サイズに基づき、必要な計測頻度・処理要件の物理シミュレーションから、安定した量産稼働を実現するための装置選定、カスタムプローブ、設備メーカー様との協業設計(治具・倣い機構への組み込みサポート)までをトータルでバックアップいたします。
毎秒 180〜200 個におよぶ過酷な量産タクトにおいて、製品の材質ブレをスキャンし自動ソートを実現している現場実績については、実績多数の 異材選別・異材検査システムページ をご覧ください。
渦電流の浸透深さ(材料ごとの違い)
次のグラフは、金属材料の違いと周波数変化に対する渦電流の浸透深さの変化を表します。
| 対象材料 | 浸透深さの傾向 |
|---|---|
| アルミ・銅 | 高導電率のため、比較的深くまで検査可能 |
| チタン・SUS | 低導電率により、表層の検査が可能 |
| 鉄・炭素鋼 | 磁性の影響で、検査可能なのはほぼ表面のみ |
また、優れたプローブを用いることで浸透深さ以上の深部を検査することも可能です。
渦流探傷センサの種類(形状による分類)
欠陥種類や探傷/選別のほか、手動/自動などの検査仕様に応じて、最適なプローブをご用意します。この他にも多くの製造実績がございます。是非お問い合わせください。
ペンシルプローブ
平面・曲面など、汎用的な検査に。航空・自動車業界で多用。
※上置プローブと呼ばれることもあるが、設置方法は上に置くだけに留まらない
内挿プローブ
熱交換管の内部及び外部探傷、腐食検査などに最適。
主な利用業界:石油化学など
貫通型コイル
管・棒・線材の周方向欠陥検出や高速異材選びに。
主な利用業界:鉄鋼、製造業一般など
回転型コイル(ECローター)
管・棒・線材の軸方向欠陥、ベアリングピンなどの高速欠陥検出に。
2〜4本のプローブを周囲で高速回転させて検査を行います。
主な利用業界:鉄鋼、自動車、製造業一般など
渦流探傷の信号表示
「X/Y表示(インピダンス表示)」「Y/t表示(時間ベース表示)」があり、更に、「Cスキャン(欠陥の2次元マッピング表示)」も可能。
渦流探傷信号の瞬間的な動きを表示します。位相角や振幅の変化から、欠陥の種類や深さを判別するのに適しています。
信号を時系列で表示します。データ点が左から右へ移動し、欠陥が発生したタイミングや連続性を把握するのに役立ちます。
検査部位を平面図のように視覚化します。ひと目で欠陥の形状や位置を認識でき、直感的な評価が可能です。
渦流探傷(ET)に関するよくある質問
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