技術コラム・お役立ち資料
いまさら聞けない「渦流探傷(ET)」の基本と、他の非破壊検査(MT/PT/UT)との最適な使い分けガイド
非破壊検査(NDT)の担当者になったばかりの方や、「今の検査方法に何となく課題を感じているが、何から変えればいいかわからない」という方は少なくありません。
特に渦流探傷(ET:Eddy Current Testing)は、「専門的で難しそう」というイメージから、導入検討が後回しになりがちな検査手法です。しかし実際には、条件が合えば他の手法と比べて圧倒的に高速・クリーン・省力化できる強力なツールです。
本記事では、4大非破壊検査手法の特徴を整理したうえで、渦流探傷が最も効果を発揮するシチュエーションを解説します。
第1章 4大非破壊検査手法の基本比較
非破壊検査の現場でよく使われる主要4手法(ET・UT・MT・PT)の特徴を、実務的な観点から比較します。
| 評価項目 | 渦流探傷(ET) | 超音波探傷(UT) | 磁粉探傷(MT) | 浸透探傷(PT) |
|---|---|---|---|---|
| 検出対象 | 表面・表層きず (導電性材料) |
内部きず・厚さ測定 | 表面・開口きず (磁性材料のみ) |
表面開口きず (材質問わず) |
| 対応材料 | 導電性材料全般(鉄・非鉄) | ほぼ全材料 | 強磁性体のみ | 非多孔質材料全般 |
| 検査速度 | ◎ 高速 (インライン対応可) |
△〜○ 中程度 | △ やや遅い (磁化・脱磁が必要) |
△ 遅い (浸透待ち時間が必要) |
| 前処理 | ほぼ不要 | カップリング剤が必要 | 磁化・脱磁処理が必要 | 洗浄・浸透・現像の各工程が必要 |
| 後処理・廃棄物 | なし | カップリング剤の拭き取り | 磁粉・油分の除去 | 浸透液・現像剤の廃液処理が必要 |
| 自動化・インライン | ◎ 容易 | ○ 可能 (システムが大型化しやすい) |
△ 困難 | △ 困難 |
| 定量的記録 | ◎ 波形・記録容易 | ○ 可能 | △ 目視判定が主体 | △ 目視判定が主体 |
| 主な弱点 | 表面から深い内部きずは苦手、形状制約あり | 接触が必要、表面近傍に不感帯あり | 非磁性体には使えない | 廃液処理・乾燥時間・オープンきずのみ |
ポイント:どの手法にも得意・得意があります。「最強の検査手法」は存在せず、製品・材料・生産ライン条件に応じた最適解の選択が重要です。
第2章 渦流探傷(ET)が最も威力を発揮するシチュエーション
2-1. 高速・インライン検査が求められる生産ライン
渦流探傷は、センサーを接触させる必要がなく(非接触検査)、高速スキャンが可能です。ベアリングの外輪・内輪、シャフト、カムシャフト、歯車など、丸棒や管状・円筒形状の部品をライン上で全数検査するのに適しています。
具体例:ベアリング外輪・内輪の表面きず全数検査(1個あたり数秒以内)/熱処理後の鋼管・線材の探傷/自動車部品(シャフト、ピン類)の加工後全数検査
2-2. 廃液・薬剤を使いたくない環境
浸透探傷(PT)は感度が高い反面、浸透液・洗浄液・現像剤の廃液処理コストと環境負荷が課題です。渦流探傷に切り替えることで、廃液処理コストの削減、環境・安全衛生規制への対応、作業環境の改善(臭気・皮膚への影響軽減)が実現します。
2-3. 磁粉探傷(MT)の段取り削減
磁粉探傷は磁性体への適用に限られ、磁化→検査→脱磁→洗浄という工程が必要です。特に脱磁の手間と後工程(組み立て時の磁性異物混入リスク)が現場の悩みとして挙がることがあります。渦流探傷に切り替えることで、工程数の削減と段取り時間の短縮が見込めます。
2-4. 異材混入・材質選別の自動化
電気伝導率や透磁率の違いを検出できるため、材質の選別にも使用できます。外観が同じでも材質が異なる部品が混入するリスクがある工程(熱処理品の混入、材料グレードの違いなど)での品質保証に有効です。
2-5. 研削焼け・熱処理品質の非接触評価
材料の物性変化(硬度変化・組織変化に伴う電気伝導率・透磁率の変化)を電気的に検出できるため、外観では識別不可能な「研削焼けの検出」や「浸炭・焼き入れ深さの推定」、「表面硬化処理品質の確認」にも対応します。
研削焼け(グラインディングバーン)検査の仕組みと検出事例
目視や磁気探傷では不可能な、研削焼けの非接触かつ定量的な検出メカニズムと、各自動車部品・精密部品での導入解決事例を詳しく掲載しています。